残したい日本の食遺産
塩引鮭(うおや)
減塩やら低カロリーやらと相変わらず〝健康食″ブームは続いているが
干物や塩辛、漬物類まで減塩されては、ちっともうまさを感じない。
塩鮭は身が元の半分ぐらいに縮まるまでしっかり塩の効いたのがよいし、
塩辛も酒がなければとても辛くて食べられないほどのあんばいがよい。
焼き網の上の塩鮭の身から徐々に白い塩が吹き出しはじめ、
皮がこんがりと焦げてきたらちょうど食べごろ。
熱々の身に箸を入れるとサクツと一片がほぐれ、
それを炊きたてのご飯の上にのせて一緒に口の中へとかき込む。
鮭と塩とご飯の取り入合わせの妙といったら、
これ以上うまいご飯の食べ方はないののでは、と思わせるほどだ。
しっかり塩が効いた鮭、いわゆる「塩引鮭」は新潟県村上市の名産品。
選ばれた秋鮭を素材に手間暇かけて手作りされる伝統の昧で、
今では希少な一品である。
鮭の内蔵とエラを取り除いてよく洗い、
一本一本塩をすり込んで、1週間ほど置く。
その後、塩抜きをして鮭を皮ごと磨き上げ、
寒風に一週間ほどさらしてようやく出来上がり、
塩が身全体にまわり、塩辛い鮭となる。
しかし、塩引鮭はただ、塩辛いだけではない。
製造工程の問に、タンパク貿がアミノ酸に変わり、
うま昧成分もたっぷり増すのである。
北海道では同様の製造工程の鮭を「山漬け」というが、ほぼ同じものだ。
塩引鮭は皮までうまい。
いや、皮こそうまい。
塩でパリッとなった皮をちびちびかじりながら飲む酒もまたうまい。
村上は平安時代から鮭の産地として知られてきた。
母なる川、三面川に遡上する鮭は現在約2万9000尾という。
村上市内の料理店では、いろいるな鮭料理が食べられるので、
塩引鮭とともに味わってほしい。
(嶺上旭=フードジャーナリスト)
☆取り寄せるなら……
(うおや)新潟県村上市大町4-3
TEL 0254・52・3056
塩引鮭一尾=7875円~(生時4.3キロ)、塩引鮭切り身=1切れ360円
ご紹介ありがとうございました。