中嶋哲夫先生のコラム「人事も歩けば」で大町文庫が紹介されました。
大町文庫
新潟県の最北端にある村上市で素晴らしい場所に出会いました。
きっかけは,地元の方の紹介です。
美味しい魚を出してくれる店として,教えていただきました。
海鮮一鰭(いちびれ)というお店です。
大町文庫という黒い建物のなかにあります。
教えていただいた場所から2~3分歩くと,黒壁2階建ての立派な建物に行き着きました。
大町文庫という看板が出ています。
「文庫」がふさわしい佇まい。
飲食店の雰囲気はありません。
幟で店だとわかりますが,店らしくはありません。
文庫に入ると螺旋階段,その奥にカフエまわりを書棚が取り囲みます。
2階け書棚だけ。本間柱先生,大嶋久夫先生,八木三男先生の蔵書と書かれ,見事に整頓されています。
持ち出しは不可ですが,カフェで「マイ栞」を入れて読むことができます。
並んでいる本は並々ならぬ知性を感じさせます。
村上出身の新潟大学の先生の蔵書? そう思いながらみていました。
置いてあった「通信」を読むと,3人は村上高校の先生。
本間先生は英文法の先生。文法を教える例文を,古典から引用して板書される。
八木先生は日本史。 ドラマのように日本史を語る先生。
大嶋先生はため息が出るような英文和訳を行われる先生。
どの先生も,5,000冊もの蔵書の隙間で生活されていたそうです。
文庫を作った方は,1970年代に高校生活を送り,3大の恩師に大きな影響を受けた生徒。
「個人でこれだけ本を集め,読まれた,その迫力を体感してほしい。
村上に素晴らしい先生がおられたことを喜んでほしい」という思いをホームページで語られています。
ご遺族が引き取れない膨大な蔵書,地元での教育に取り組んだ恩師の蔵書,それらを地元の方が読めるようにされたわけです。
文庫を開設した方は,ご自身の生地(町外れの海岸の集落)でクリニックを開業されています。
テナントとして入ってる海鮮一鰭の社長は同級生。
文庫の隣で魚加工品を扱う「うおや」を経営されています。
お二人がタッグを組んで,大町文庫が開設されたとのこと。
お茶や食事ができることで,自然に書棚に触れ,たまたま手に取った本から世界が広がる,
大町文庫の取組みに人が育つことの原点をみた想いがします。
(MBO実践支援センター代表 大阪商業大学特任教授)