マガジンハウスムック |
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銀色から飴色に輝く塩引き鮭は、村上の厳しい北風にさらされておいしく発酵する
秋に収穫したお米や豆をたくわえ、保存食を作り、
寒さ厳しい冬においしいご飯を食べる北国の食の知恵。
そんな味覚を訪ねて良材王国、新潟県ヘ
シダックスの管理栄養士、石川美幸さんが向かいました。
長い海岸線と奥深く広大な山野を持つ新潟県は、海の幸、山の幸に恵まれたまさに良材の宝庫。お米のトップブランド「コシヒカリ」は全国的に有名ですが、上越、中垣、下越と各地域を見ると、それぞれの土地で長く受け継がれてきた伝統料理が豊富にあります。 今回は、そんな新潟県の中でも特に歴史と個性のある食材、塩引き鮭と、もち米を使った赤飯団子、油揚げにスポットを当てました。
最初は山形県に近い下越地方、村上市。この地方で獲れる鮭は平安時代から宮廷へ献上されていたという歴史ある魚で、新潟県ではお正月のおせち料理に使う「年取り魚」として欠かせません。長期保存のために考案された「塩引き」という加工は、秋鮭を塩漬けしたのち、丁寧に塩を落として皮を磨き、塞風にさらした干物で、民家の軒に吊るしか姿はまさに冬の風物詩。頭から尾ひれの完まですべて食べっくす新潟県民。その料理はなんと百種類以上に上るそうです。
特別に作っていただいた鮭料理。手前左は「塩引き鮭の塩焼き」。その上から時計回りに、地元でしか食べられない新鮮な「鮭の白子の刺身」、 腹子も入って贅沢な「鮭の飯寿司」、頭の軟骨を使う「氷頭なます」、銘酒に浸けていただく「酒びたし」。他にはらわたを使った汁物など、頭から内蔵まで余すところなく調理される。
村上城の城下町。黒塀の風情ある街並みが続く 「町人町」の一画で、200年前から「塩引き鮭」を
作り続けてきた老舗「越後村上うおや」さんへ。ここでは若くて形の良い鮭を選んで、美しい塩引き鮭を作ります。
まずは数日間の塩漬けに。その後水で塩を洗い流し、丁寧に皮の表面を磨く細やかな作業が特徴です。
その後、「鮭工場」の2階に作られた天井の高い干し場で、北西の寒風に数週間さらすのですが、
その間に発酵が起こり、うまみ成分が熟成されるのです。
今でも新潟県ではこの塩引き鮭をお歳暮や贈答品として使います。大晦日には神様に捧げ、
「年取り魚」として食べるのが習わし。
鯛より、獅よりありがたい、魚の王様なのです。
「今は自分でさばく人も少ないからね」。贈答には職人が見事に切り分けた塩引き鮭1尾分が人気。
左/「鮭はとこを食べてもおいしいのよ」という女将の上村八恵子さん。
右/(鮭工場にうば)」の入り口にも塩引き鮭ののれんがかかる。
市内を流れる三面川は、今から250年前に世界で初めて鮭の天然卵を保護しながら鮭漁を行う制度が整った場所。
10月下旬から12月にかけて、遡る鮭を伝統の「唐綾網漁(いぐりあみりょう)」とウライという仕掛けで獲る「一括採捕」の2つの漁が行われています。
午前と午後の1回ずつ、漁の時間になると地元の人たちが新鮮な鮭を求めて漁協の市場に直接買い付けに。
家庭でもごく自然に鮭1匹を丸ごと調理できる。
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越後村上うおや サイト 0254-52-3056 https://www.uoya.co.jp